写真展
(展示名・美術館名・期間・コメント)
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TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から(東京都写真美術館)
TOP Collection: A Traveler from 1200 Months in the Past
2024年4月4日(木)〜 7月7日(日)

没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる(東京都写真美術館)
Ihei Kimura — Living in Photography 50 Years after His Death
2024年3月16日(土)〜 5月12日(日)

中平卓馬 火―氾濫(東京国立近代美術館)
Nakahira Takuma: Burn—Overflow
2024年2月6日(火)〜 4月7日(日)

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜(東京都写真美術館)
TOP Collection: A Genealogy of “Peep Media” and the Gaze
2023年7月19日(水)〜 10月15日(日)

森山大道の東京ongoing(東京都写真美術館)
Moriyama Daido's Tokyo: ongoing
2020年6月2日(火)〜 9月22日(火・祝)
▼公衆衛生の危機において,多くの展覧会が中止や会期短縮に追い込まれました。歴史上,美術館や博物館は,それまで貴族など一部の上流階級によって独占されていたコレクションを,広く市民に開放してくれた大きな役割がありました。「広く開いている」ことが欠かせない展覧会の必要条件が揺るがされる,極めて難しい状況に芸術は置かれることになりました。そんななか鑑賞できた森山大道の写真展では,作品の考察にとどまらず,未来における展覧会の形や役割を考えさせられました。普遍(不変)であるものなどないのなだな,と痛感させられる時代に私たちはいるのですね。
イメージの洞窟 意識の源を探る(東京都写真美術館)
from the cave
2019年10月1日(火)〜 11月24日(日)
▼「洞窟」を題材に,我々人間はどのようにして“イメージ”という視覚情報を認知しているのか,多角的に切り取った展示。時に写真技術の発展の歴史から,時にプラトンのイデアで知られる洞窟の比喩を引用して哲学的視点から,知的好奇心を刺激してくれました。
TOPコレクション イメージを読む 写真の時間(東京都写真美術館)
TOP Collection Reading Images: The Time of Photography
2019年8月10日(土)〜 11月4日(月・振休)
志賀理江子 ヒューマン・スプリング(東京都写真美術館)
Shiga Lieko: Human Spring
2019年3月5日(火)〜 5月6日(月)
▼東京都写真美術館では2016年のリニューアル・オープン以降,以前に増して従来の様式にとらわれない写真展示に挑戦しているように思います。本展示も,数多く並んだ巨大な直方体の各面に写真が貼り付けられた強烈なインスタレーションで,観る者を圧倒していました。

写真の起源 英国(東京都写真美術館)
The Origin of Photography: Great Britain
2019年3月5日(火)〜 5月6日(月)
▼写真技術の発明史においてはフランス人のダゲールが発明したダゲレオタイプの存在感が強いですが,本展示は英国人のタルボットが開発したカロタイプに焦点を当てた展示です。カロタイプの像を得る仕組みは,ネガ-ポジ法として今日でもフィルム写真の主流の現像方式であると紹介されます。ありのままを写し取る写真技術は記録手段として活躍したのはもちろん,まったく新しい芸術表現の一手法として発明初期から様々な試行錯誤が行われてきた様がよくわかります。世界初の写真集である『自然の鉛筆』も展示されており,写真史好きとしては大変面白い展示でした。写真美術館の豊富なコレクションならではの充実した作品群です。

マイケル・ケンナ写真展(東京都写真美術館)
MICHAEL KENNA A 45 Year Odyssey 1973-2018
2018年12月1日(土)〜 2019年1月27日(日)
▼世界的に有名な英国人写真家マイケル・ケンナの日本初の回顧展。美しい白黒の階調で表現された風景写真は言うまでもなく素晴らしかったです。さらに本展示ではケンナがナチスドイツの強制収容所を撮ったシリーズ〈Impossible to Forget〉が日本ではじめて展示されており,そのメッセージ性に強く心が揺さぶられました。このようにあまり知られていないシリーズに出会えるのが,個人写真家の回顧展の嬉しい発見です。

建築×写真 ここのみに在る光(東京都写真美術館)
Architecture x Photography A Light Existing Only Here
2018年11月10日(土)〜 2019年1月27日(日)
▼写真と建築との関係は密であり,この展示でも紹介されているように,ニエプスが撮影した世界初の写真は建築物でした。当時は露光時間が長時間必要だったため,動かない建築物は被写体として適切であったのです。建築物は誰が撮っても同じということはなく,写真家各々の個性が反映されるのが面白いですね。筆者が好きな柴田 敏雄によるベルギーの歩道橋のシリーズはどこか近未来を感じさせるような無機質さがやはり漂っており,興味深く鑑賞しました。

Bernard Plossu, Al-Mariyaa, un désert et la mer(シャトー・ドオゥ,フランス)
2018年10月26日(金)〜 2019年1月6日(日)
▼フランス南西部の街トゥールーズ(Toulouse)へ旅に行ってもやはり写真美術館はしっかり調べて足を運びました。本来はその名前の通り「給水塔」だったシャトー・ドオゥ(Le Château d'Eau)。今では給水塔としての役割を終えていますが,設備はそのまま保存して写真美術館としてリフォームされています。トゥールーズを旅した当時は黄色いベスト運動(Gilet jaune)が盛り上がっており,当初鑑賞しようと思っていた日に美術館まで行ったら,デモのため臨時閉館となっており焦ったことがむしろ記憶に残っています。ちなみに道を挟んだ向かいにはHôtel-Dieu(“施療院”)附属の医学史博物館(Musée d'histoire de la médecine de Toulouse)があります。

シャトー・ドオゥ(Le Château d'Eau)

マジック・ランタン 光と影の映像史(東京都写真美術館)
The Magic Lantern A Short History of Light and Shadow
2018年8月14日(火)〜 10月14日(日)
▼東京都写真美術館では従来写真の展示が中心でしたが,今回は映像に特化した展示。中世のヨーロッパで流行していたマジック・ランタンの実物が展示されており,見応えのあるものでした。

TOPコレクション たのしむ,まなぶ 夢のかけら(東京都写真美術館)
TOP Collection: Learning The Fragments of Dreams
2018年8月11日(土)〜 11月4日(日)

杉浦邦恵 うつくしい実験 ニューヨークとの50年(東京都写真美術館)
SUGIURA Kunié: Aspiring Experiments New York in 50 years
2018年7月24日(火)〜 9月24日(月)
▼この展示のなかで,実際に病院で撮影されたレントゲン写真をつなぎ合わせて人の形のようにしたモンタージュ作品がありました。本当は,異なる人同士のレントゲンが組み合わさってあたかも一つの生命体を構成しているかのような手法が面白いポイントだったと思うのですが,医学的な目的で撮られたレントゲン写真の内容に意識が向いてしまい,解剖学的に脈絡なく継ぎ接ぎされたモンタージュに違和感を抱いてしまったのです。当時研修医であったので,そのように鑑賞してしまう自分に「ああ職業病だ……」と少しわびしくなったのでした。

TOPコレクション たのしむ,まなぶ イントゥ・ザ・ピクチャーズ(東京都写真美術館)
TOP Collection: Learning Into the Pictures
2018年5月12日(土)〜 8月5日(日)

生誕100年 ユージン・スミス写真展(東京都写真美術館)
W. Eugene Smith: A Life in Photography
2017年11月25日(土)~ 2018年1月28日(日)
▼ユージン・スミスというと《楽園への歩み The Walk to Paradise Garden》が有名ですが,本展示ではフォト・ジャーナリストとしての歩みを追っており,はじめて知るシリーズ作品が多くありました。とくに,<カントリー・ドクター Country Doctor>のドキュメンタリー性が記憶に残っています。ユージン・スミスの残したPhotography is a small voice.という言葉が大変印象的。

TOPコレクション 平成をスクロールする 秋期「シンクロニシティ」(東京都写真美術館)
TOP Collection: Scrolling Through Heisei Part 3 Synchronicity
2017年9月23日(土・祝)~ 11月26日(日)

総合開館20周年記念 
荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-(東京都写真美術館)
ARAKI Nobuyoshi: Sentimental Journey 1971-2017-
2017年7月25日(火)~ 9月24日(日)
▼荒木 経惟氏の作品を発表の時系列順に一挙に鑑賞できた貴重な展示でした。《センチメンタルな旅》の全プリントが展示されており,その刺激的な表現は大変見応えのあるものでした。妻との新婚旅行から,死,そして死後までの作品の展示を追うことで,夫婦の歩んだ時間,荒木氏の写真家人生をあたかも追体験しているような気分になれたのです。〈空景〉〈遺作 空2〉〈三千空〉では,極めて多彩な空の表現の手法に感銘を受け,それまで単調になりがちだった筆者自身の空の風景写真を見つめ直すきっかけとなりました。

【映画】パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>(東京都写真美術館)
ROBERT DOISNEAU: THROUGH THE LENS
2017年4月22日(土)~ 5月25日(木)

総合開館20周年記念事業 山崎博 計画と偶然(東京都写真美術館)
YAMAZAKI HIROSHI / CONCEPTS AND INCIDENTS: A RETROSPECTIVE FROM THE LATE SIXTIES ONWARDS
2017年3月7日(火)~ 5月10日(水)

総合開館20周年記念事業 TOPコレクション 東京・TOKYO(東京都写真美術館) 
TOP Collection: Tokyo Tokyo and TOKYO
2016年11月22日(火)~ 2017年1月29日(日)

Audrey Hepburn: Portraits of an Icon(ナショナル・ポートレート・ギャラリー,英国)
2015年7月2日(木)〜 10月18日(日)
▼わずか数日の英国・ロンドン滞在中にNational Portait Galleryに立ち寄った目的は他でもない,ポートレート写真の展示を観るためでした。それまでポートレート写真というとどうしても雑誌のグラビアのイメージが抜けず,自ら撮ったことがないこともあってどこか軽視していたように思います。しかし,この展示の広告を目にして思ったのです。人の生き生きした表情にはなんと魅力があることでしょうか! もちろん,オードリー・ヘップバーンが麗しいからだと言われればそれは間違いないのですが,人間の一瞬の表情を写し取ったポートレートには,老若男女問わず観る者のこころに訴えかけるパワーがあるのだと理解したのでした。

写真新世紀東京展2014(東京都写真美術館)
New Cosmos of Photography Tokyo Exhibition 2014
2014年8月30日(土)~ 9月21日 (日)

世界報道写真展2014(東京都写真美術館)
WORLD PRESS PHOTO 2014
2014年6月7日(土)~ 8月3日 (日)

佐藤時啓 光―呼吸 そこにいる、そこにいない(東京都写真美術館)
Sato Tokihiro Presence or Absence
2014年5月13日(火)~ 7月13日(日)

岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて(東京都写真美術館)
Photographs of AKIHIKO OKAMURA all about life and death
2014年7月19日(土)~ 9月23日(火・祝)

平成26年度 東京都写真美術館コレクション展 スピリチュアル・ワールド(東京都写真美術館)
Collection Exhibition 2014 The Spiritual World
2014年5月13日(火)~ 7月13日(日)

101年目のロバート・キャパ ―誰もがボブに憧れた (東京都写真美術館)
Robert Capa, the 101st Year: They All Adored Bob
2014年3月22日(土)~ 5月11日(日)
▼言わずと知れた戦場カメラマンのロバート・キャパですが,その生涯を丁寧に追った展示ではじめて知るエピソードも多々ありました。写真論で論じた「キャプションの言語的メッセージ性」は,この展示の作品を鑑賞していて気づいたことでした。

Ellen Kooi, As It Happens(La galerie Les Filles du Calvaire,フランス)
2014年3月14日(金)〜 4月26日(土)
▼パリ3区にある小さなギャラリー。小規模ながら洗練された写真展を積極的に企画しています。筆者が観に行ったのはオランダ人女性写真家のEllen Kooiの写真展。超広角で切り取られた強い存在感の自然のなか佇む少女の写真がとても印象的でした。展示スペースが広々ととられているので,あたかも写っている風景のなかに自らも入り込んだかのような気分になったものです。

HENRI CARTIER-BRESSON(ポンピドゥー・センター,フランス)
2014年2月12日(水)〜 6月9日(月)
▼近現代芸術を中心に展示するフランス・パリのポンピドゥー・センター(Centre Pompidou)で開かれた,カルティエ=ブレッソンの回顧展。豊富な作品数で,重厚感のある展示でした。言わずと知れた《サン=ラザール駅裏》などの代表作はもちろん,あまり知られていない晩年の作品も知ることができました。彼がマグナム・フォトを離れたあとに撮った妖艶なポートレイトやスケッチには,ルポルタージュ写真とはひと味違った魅力がありました。

Mathieu Pernot, La Traversée(ジュ・ド・ポーム国立美術館,フランス)
2014年2月11日(火)〜 3月18日(火)
▼パリ・チュイルリー公園の美術館というと,モネの《睡蓮》を展示するオランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)が大変有名ですが,実はオランジュリーと対称をなすように建っているのがジュ・ド・ポーム国立美術館(Jeu de Paume)です。精力的に近現代の写真・映像展示を行っていることで知られています。フランス観光に訪れていた筆者は意気揚々と出かけたものです。

ジュ・ド・ポーム国立美術館(Jeu de Paume)

MEP 2014 Saison #1(ヨーロッパ写真美術館,フランス)
2014年1月15日(水)〜 3月16日(日)
▼ヨーロッパ写真美術館(Maison Européenne de la Photographie)は,パリのなかでもファッション関係のおしゃれな店が集まるマレ地区(Le Marais)に位置する写真専門の美術館です。パリではJeu de PaumeにMEPに,といつでもこんな贅沢な写真展が観られるのか!と感激したのが記憶に新しいです。Joan Fontcubertaのシリーズ〈Camouflages〉のなかで犬が宇宙服を着て宇宙空間を舞っている作品がとてもチャーミング。

平成25年度 東京都写真美術館コレクション展 写真のエステ−五つのエレメント(東京都写真美術館)
Collection Exhibition 2013 The Aesthetics of Photography - Five Elements
2013年5月11日(土)~ 7月7日(日)

アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密 (東京都写真美術館)
Erwin Blumenfeld: a hidden ritual of beauty
2013年3月5日(火)~ 5月6日(月・休)
▼ファッション誌などで名を馳せたアーウィン・ブルーメンフェルドの本邦初の個展だったようです。ファッション誌は普段読まないので,どのような写真が優れたファッション写真なのか知らなかったわけですが,美を追求してシュルレアリスムの手法も用いた写真群は刺激に富んでいました。

操上和美 時のポートレイト ノスタルジックな存在になりかけた時間。 (東京都写真美術館)
Kurigami Kazumi – portrait of a moment
2012年9月29日(土)~ 12月2日(日)

田村彰英 夢の光(東京都写真美術館)
Tamura Akihide Exhibition Light of Dreams
2012年7月21日(土)~ 9月23日(日)
▼この写真展を観たのは,大学に入学し新生活にやっと慣れてきた頃でした。同じ風景を経時的に撮り続けたシリーズや,東日本大震災の被災地を撮ったシリーズを観て,「これは真実を切り取る写真でしかできない表現手法なのだ」と写真の力を再認識したのでした。

平成24年度東京都写真美術館コレクション展 自然の鉛筆 技法と表現(東京都写真美術館)
The Pencil of Nature Technique and Style
2012年7月14日(土)~ 9月17日(月・祝) 
▼写真の歴史を調べるなかで世界初の写真集とされる《自然の鉛筆》の存在は知っていました。東京都写真美術館が所蔵しているそのオリジナルが観られる貴重な展示とあり,興奮を抑えきれず展示室に入った記憶があります。

生誕100年記念 写真展 ロベール・ドアノー(東京都写真美術館)
RETROSPECTIVE
2012年3月24日(土)~ 5月13日(日)

古屋誠一 メモワール. 「愛の復讐、共に離れて……」(東京都写真美術館)
Seiichi Furuya Mémoires.
2010年5月15日(土)~ 7月19日(月・祝)
▼まだ高校生だった筆者にとって,この展示は“大人”過ぎて十分に理解できなかったように思います。そして,その展示の強烈なイメージが多感な少年に与えた刺激もまた,あまりに強すぎました。

世界報道写真展2008(東京都写真美術館)
WORLD PRESS PHOTO 2008
2008年6月14日(土)~ 8月 10日(日)
▼はじめて鑑賞した報道写真展は,高校生の私がはっと目を見開く鮮烈なものでした。携帯電話のテキストで知ったつもりになっていた国際情勢がダイナミックにそして劇的に切り取られ大写しになった作品を観て,それまで味わったことのない臨場感をもって,遠い海の向こうのニュースが迫ってきました。LIFEなどのグラフ雑誌が一世を風靡したのも頷けます。

ランドスケープ 柴田敏雄展(東京都写真美術館)
LANDSCAPE SHIBATA TOSHIO
2008年12月13日(土)~ 2009年2月8日(日)
▼筆者がもっとも印象に残っており,好きな写真展のひとつです。自然のなかに人間が作り出した無機質なダムやコンクリートのブロックが,まるで美しい幾何学模様のように写し出されています。本来自然と調和しない人工物が,あたかも一体となって絶対的な景色として眼前に鎮座しているのです。その巧みな表現手法に感銘を受け,いまでも写真集を眺めて楽しんでいます。

森山大道展  Ⅰ.レトロスペクティヴ 1965-2005,Ⅱ.ハワイ(東京都写真美術館)
MORIYAMA DAIDO Ⅰ.RETROSPECTIVE 1965-2005, Ⅱ.HAWAII
2008年5月13日(火)~ 6月29日(日)
▼森山大道の,フィルムの粒子が荒々しく浮き出た独特の現像スタイルに筆者が出会ったのがこの展示でした。それまで極力ノイズをおさえて高精細に撮れば撮るほど優れた写真だと思い込んでいた未熟な筆者にとって,このワイルドなスナップ写真群は大変な驚きでした。すっかり森山大道の作風の虜になり,しばらくのあいだは猿真似のようにノイズの被った写真を撮り続けました。

シュルレアリスムと写真 痙攣する美(東京都写真美術館)
Surrealism and Photography BEAUTY CONVULSED
2008年3月15日(土)~ 5月6日(火)
▼この展示に,そして写真美術館に出会ったときの衝撃は,10年以上経ったいまでも忘れることはありません。高校生だった筆者はある日学校に行かず,乗換えで利用していた恵比寿の街をふらふらとしていました。そして出会った東京都写真美術館のポスター。その頃すでに写真撮影を趣味にしていましたが,写真を「観る」という発想はまったくなく,面白がって美術館に入ってみたのです。当時の筆者は「シュルレアリスム」という芸術運動すら知りませんでしたが,その摩訶不思議な作品を目の当たりにしたときは,頭を殴られるような経験でした。芸術の一手法としての写真の魅力,そして目の前の物体を切り取るだけだと思っていた写真にいかに多彩な表現の可能性があるのかを知ったのです。人生を,価値観を変える出来事だったと言っても過言ではありません。写真に「撮る」意外に「鑑賞する」楽しみがあることを教えてくれたのです。この展示を機に,筆者は学校をサボっては写真美術館に足繁く通うようになったのでした。
写真集
購入順に掲載しているので,出版年の順序とは一致しません
《我われは犬である》
エリオット・アーウィット著 / 高橋 周平訳,宝島社,2002年1月
Elliott Erwitt, To the Dogs
▼東京都写真美術館の展示でアーウィットのチャーミングな犬の写真を観て,忽ち彼のユーモラスな世界観の虜になりました。可愛らしいワンちゃんの写真がたくさん載っています。本書は文庫サイズなので,手に取りやすいのも利点です。

Diane Arbus, An Aperture Monograph, New York, 1972.
▼米国人写真家のダイアン・アーバスはVogue誌などのファッション誌で活躍したほか,マイノリティの人々を捉えたシリーズが評価されています。海外の写真集は高価で学生時代はなかなか手が出せなかったのですが,社会人になり思い切って購入に踏み切りました。

《自然の鉛筆》
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・トルボット著 / 青山 勝訳,赤々舎,2016年1月
William Henry Fox Talbot, The Pencil of Nature
▼世界初の写真集である『自然の鉛筆』の日本語訳。訳の後には各図版の解説がついており,後半は『自然の鉛筆』に関する考察が続きます。写真史をかじった者としては是非手に入れておきたいと思い,本棚に加えることにしました。この写真集も,社会人になって購入の決心がついた一冊です。ずっしりと重い写真集が自分のコレクションになる瞬間は,ちょっとした非日常であると感じます。

Vasantha Yogananthan, Early Times, Paris, Chose Commune, 2016
▼紀元前300年ごろのサンスクリットの神話に材をとったシリーズA Myth of Two Souls全7作の第1作。作品を通じて神秘的な空気感が流れており,構図や露出,色調の工夫には目を見張るものがあります。Vasanthaの精力的な写真集制作を応援しています!

Shoji Ueda, Paris, Chose Commune, 2015
▼筆者の従姉妹Cécile Poimbœuf-Koizumiと写真家Vasantha Yogananthanが設立したフランスの写真集出版社Chose Communeによる,日本人写真家植田 正治の写真集。植田 正治はフランスでも大変人気の高い写真家の一人です。彼はモノクロームの砂丘シリーズが有名ですが,従来存在があまり知られていなかったカラー作品を紹介した点が本写真集の大きな特徴です。モノクロの作品群に挿間的に登場するカラー写真は非常に色鮮やかで,ページを捲る読者をあっと言わせるインパクトがあります。さらに豪華なことに,写真に続いて芥川賞作家の堀江 敏幸の書き下ろし小説『オールドレンズの神のもとで』が掲載されています(日本語・英訳・仏訳)。内容はもちろんのこと写真集の装丁も大変美しく,美術作品として完成度が実に高い本作は成功を収めたようです!

《ランドスケープ 柴田敏雄》
財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館 監修,旅行読売出版,2008年12月
▼「写真展」でも紹介した『ランドスケープ 柴田敏雄展』の図録。写真展や美術展では公式図録が制作されてミュージアムショップで販売されていることがよくあります。展示に強く心を動かされたファンにとって図録は,展示室での鮮烈な体験をいつでも再現できるタイムカプセルのような存在です。

《パリ・ドアノー ロベール・ドアノー写真集》
佐藤 正子訳,クレヴィス,2012年12月
Robert Doisneau, Paris en liberté
▼東京都写真美術館のロベール・ドアノー写真展のお土産として購入しました。この写真集は比較的安価で,学生だった筆者がアルバイト代で購入してもお財布に優しいものでした。しかし同時に,サイズも坪量も大きな上質紙で作られた高価な写真集への憧れが高まるきっかけにもなりました。

《フジフイルム・フォトコレクション》
富士フイルム株式会社,2014年1月
▼富士フイルム創立80周年を記念して立ち上げられたコレクションで,国内外を代表する101人の写真家が取り上げられています。各々の写真家について略歴と代表作の解説が添えられており,大変重厚な作りとなっています。写真史を代表する写真家を一挙に回覧できる贅沢な写真集であり,大切なコレクションです。

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